測量(その1) 
技術は使用目的があって初めてその効果を発揮します。
何のために測量するのか、目的別に当事務所が請け負う測量を分類してみました。

基準点測量

測量とは実地の様々な物の位置を机上の座標軸上にプロットする技術です。基準となる位置を決定し骨格的な測量網を形成、細部測量の前提としておこなう測量のことで、この測量を行なわずに細部測量は極小規模の測量を除いてできません。
問題は物の位置の基準となる座標軸に何を採用するかですこの写真は国が設置した基準点を基に、市がその下位の基準点を設置し、その位置を測量している様子です。
国および地方公共団体等は測量法に基づき基準点測量を行いますが、その測量法では採用すべき座標軸を規定しています。平成14年4月1日より施行された測量法により世界基準の座標軸が採用されています。

世界基準の座標軸を採用するか、否かは、物の位置を世界同一基準で捉える必要があるか、否かによって決定します。測量の目的によっては基準となる座標軸を「その測量」に限って適用される任意の座標軸を採用してもよいことになります。任意の座標軸を採用する場合は写真のような公共基準点からの測量は必要なくなります。

世界基準(公共座標)を採用することのメリット、デメリット

1、公共座標値を採用するためには写真のようなGPS測量やトータルステ-ション(TS測量機)を使用しての多角測量を目的物の位置より離れた、遠方の公共基準より行わなければ成果が得られません。よって測量に要する費用が増大します。

2、任意座標を採用すれば目的物の位置をその周辺でのみ適用される任意的、相対的位置関係で特定でき、測量費用は基準点測量に関しては、かなり節約できます。
3、公共座標値は世界同一基準ですので他の公共測量成果と一体化します。
また、測量した位置を逆に復元する場合、現地に設置した基準点が紛失または移動しても常に高精度で復元可能です。
4、任意座標で得られた成果は現地の相対的な位置を示しますので現地に設置した基準点や、測量した地物がすべて紛失や移動した場合、復元が困難になります。
平成17年3月7日不動産登記法の改正、施行により、登記申請に添付する地積測量図の作成にあたって(規則77条)は、原則、公共基準点よりの測量が必要となりました。
この基準点測量は(有)ナミキ測量設計がお客様の目的、ご要望に応じ的確に請け負います。

現況測量

測量された基準点より現況地物の位置を特定するための測量です。
位置の特定を要する現況地物が何であるかが、測量を行うことの目的ともいえます。
例えば位置の特定を要する目的物が土地の境界標識であったり,道路の側溝であったり,様々ですこの現況測量の成果を平面上に作図したものが現況測量図です。

何のために現況測量を行い現況測量図を作成するのかいくつかその目的事例をあげてみました。

目的例−1土地の境界を確定させたい
土地の境界が不明の時、境界確認や境界立会いの際の参考資料、基礎資料として現況測量の成果は欠かせないものです。

目的例−2 建物を新築や増築したい時建物の設計には敷地の現況測量は欠かせないものです。
目的例−3宅地を造成し土地を有効に利用したい。
宅地を造成する場合、宅地造成設計の基礎となるものは現況測量図です。平面的要素のほかに立面的要素(高低差)なども盛り込みます

この現況測量は(有)ナミキ測量設計がお客様の目的、ご要望に応じ的確に請け負います。

網平均計算

基準点測量では基準点座標を計算するうえで平均計算を行います。
任意座標系で狭い範囲を測量する場合や、公共座標系で近傍(100m以内程度)に既知点が存在し接点2点以内で目的を達する小規模の基準点測量の場合は行きっ放しの開放多角方式でも良いのですが、この場合は測量精度の確認ができません。
基準点測量においては、何らかの形で既知点座標との整合を図る計算を施すのが一般的です。

特に平均計算とは公共座標系での測量において、厳密(水平、高低)網平均計算、簡易(水平、高低)網平均計算、3次元網平均計算等を指すようで、任意座標系で行う閉合トラバース計算や結合トラバース計算は既知点座標との整合を施す計算ではありますが平均計算と言うには疑問があります

小生は基準点路線の中にある交点の計算をすることを平均計算と考えます。公共測量作業規定では単路線方式も平均計算と言っていますがそれはさて置き、交点があって初めて網が形成されると言えるのではないでしょうか。

基準点測量に於いて網を組む必要性については、公共測量作業規定や、土地家屋調査士調査測量実施要領において規定されているからと言えばそれまでですが、測量成果に影響があるからです。

一つは、基準座標系の中での位置への影響、もう一つは測量の歪みの影響
二つとも位置座標への影響を指している訳で同じことなのですが、言いたいことは任意座標系に於いては一つ目の基準座標系内(日本平面直角座標系2000,2011等)での位置については該当しませんが、二つ目の歪みについては網を組んで平均計算した場合と、そうでない場合とで成果に差が出てくると言った事です。

例えば、広範囲の宅地造成地を測量する場合、造成工事が進んだ段階で、残存基準点を基に基準点測量を行い、設計座標(新設道路の街区点等)の現地測設を行います。
造成工事開始前に設置した基準点は工事の進捗と共に多くが忘失し、残存点は少なくなります。
特に工事範囲内に設置した基準点は工事により忘失し、残存しても異常が懸念されます。
あてになる残存点は工事範囲の外に設置したものになります。

新設道路の街区点座標は当初の基準点測量成果によって得られた座標を基に設計した点なので、現地にその位置を正確に再現できないと、設計と工事のずれが出てしまいます。
街区点等を現地再現する段階において当初設置の基準点が忘失している場合、残存基準点を基に、現地再現の必要な箇所近傍に基準点を新設し、そこから現地再現を行う訳ですが、問題は、当初の基準点の座標に歪みがある場合や、再測量の基準点座標が歪んでいたりすると、設計通りの現地再現が出来ず、道路線形の不整合や予定宅地の増減等、最終的に工事の出来形に影響してきます。

事例的に説明すると、宅地造成地の外周を閉合トラバースで測量し、任意座標を得たとします。
閉合トラバースはスタート点に最終的に戻るので、スタート点の座標値を任意座標値で設定しても閉合差の確認ができるので、測量自体の大きな間違いは防止できます。
しかし、その基準点を繋いだ環は例えば、ある程度固い輪ゴムの輪のようなもので、縦横伸縮が生じてもおかしくありません。
そこで輪の中央に一本棒が入れば輪の形は固まってくるしY字型の棒が入れば更に固まってきます。

輪の中に一本棒や、Y型棒を入れたような形の基準点配置を行うことを網を組むと言い、3差路以上の交差部を交点と言います。

簡易(水平、高低)網と厳密(水平、高低)網について
概略的かつ不正確ですが、平たく説明します。
公共座標系(日本平面直角座標系等)を基準とした測量の場合、前述した網(基準点路線)の歪みに加え、座標系内での位置が重要となります。
元来、基準点測量とはこう言った基準座標系内の位置を特定するための測量であり、回転楕円体の地球の一部を切り取って無理やり平面の上に投影した位置を座標値で表現しているとも言えます。

平面に投影するうえで、地表面上の地形凹凸をならして、仮定の球体面を想定し、さらに長い日本列島の球面部を平面に投影するので、平面を幾つもに区分します。
このため基準平面上の座標値を得るには、実地で観測した数量(TSの場合角度、距離、GPSの場合ベクトル)に補正を加えた数値にしなければ統一の座標系内での位置は特定できません。

その先、更に概略的になりますが、観測により得られ補正が加えられた数量を使って座標値を計算する訳ですが、ここで必要となるのは既知点の座標値です。測量のスタート地点の座標値が前述の基準座標系の座標値として判っていなければなりません。

大雑把にいうと、地球上の位置や、日本国内の起点となる点の位置座標は基本測量として、国が行います。国の基本測量で得られた基点の座標値を基に下位の基準点の測量を行う事が我々が行っている前述した基準点測量と言う事になります。

TS(トータルステーション)測量の場合、得られる数値は角度と距離です。
この角度と距離を使って座標値を計算する訳ですが、ここで前述の網平均計算が出てきます。

現在ではコンピューターの進化により、計算量の多い方程式も簡単に計算できるようになりましたが、昔は計算を簡略化するために交点位置が予め決まっていて条件方程式が作りやすいY型やX型等の定型の網を、距離、角度と言った種類の違う測定量を基に計算した座標値を測定値として考えて平均計算する簡易網平均計算でした。

現在は計算量の多少は関係なくなりましたので、網の形に縛られることなく自由な網ができる観測方程式に替っています。
観測方程式は、1つの観測に1つの方程式が作られるため、交点観測等多方向からの観測により、未知数より方程式の方が多くなり、一義的に解は求まりません。そこで最小二乗法により正規方程式を導すと言う事です。

厳密網は距離、角度を近似値との残差を最小二乗法により補正してに求め、座標計算しているとの事。簡易網との違いは交点の平均方向などを気にせず、自由な観測が可能で、交点観測はどの方向を観測してもOK,観測(方向)数が多ければ多いなりに精度が上がるはずで、前述した任意座標系での網平均にはうってつけの計算方法と言えます。これはいわば厳密網平均計算における、仮定網計算に該当するのではないかと思います。

広範囲な宅地造成や開発行為等の測量の際、近傍に公共基準点が無い場合は任意座標系で測量をすることになりますが、網平均は設計と工事の重要な懸け橋となります。
弊社の測量は簡易網、厳密網を必要に応じて組み、積極的に平均計算を取り入れております。

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